Research
セロビオース2-エピメラーゼを利用した機能性オリゴ糖エピラクトースの開発
セロビオース2-エピメラーゼ (CE) をラクトース (Galβ1-4Glc) に作用させると,希少オリゴ糖のエピラクトース (Galβ1-4Man) が得られます.
CEとラクトースの反応
この反応を利用して大量調製したエピラクトースを用いて生理機能を解析すると,エピラクトースは難消化性のオリゴ糖であり,ラットを用いた経口投与試験でビフィズス菌や乳酸菌が増加することによる優れた腸内細菌叢改善作用を持つことが明らかになりました。
エピラクトースの生理機能 腸内細菌叢改善効果
エピラクトースにより腸内細菌叢が改善されると,腸内発酵に伴う一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換が抑制されました。二次胆汁酸は毒性が高く,大腸ガンのリスク因子であると考えられていることから,この腸内細菌叢の改善は大腸ガンのリスクを低下させるものと考えられます。
エピラクトースによる二次胆汁酸生成の抑制
また,エピラクトースの経口投与は,腸内細菌による酢酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸生成量を増加させ,カルシウムなどの吸収を促進しました。以上のように,エピラクトースは優れた生理機能性を持つオリゴ糖であることが明らかになりました。これらの生理機能性については佐分利ら,応用糖質科学,2011にて詳しく紹介されています.
エピラクトースによるミネラル吸収の促進
ラクトースは牛乳中に多く含まれていることから,安価に入手可能です.このため,ラクトースを原料としたエピラクトースの製造はラクトースや乳製品の新しい用途を与えると考えられました.酵素反応によるオリゴ糖の工業的製造では,微生物汚染を避ける目的で50℃以上の温度で反応が行われます.このため,工業的製造に使用する酵素は,優れた耐熱性を備えている必要があります.私たちは,工業的反応でも使用可能な耐熱性酵素をRhodothermus marinusから見出し (Ojima & Saburi, et al.,Biosci. Biotechnol. Biochem., 2011),本酵素を固定化したバイオリアクターによる連続的なエピラクトース生成反応系を構築しました (Sato & Saburi, et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 2012).このシステムを利用するとバッチ反応式よりも酵素使用量を削減することが見込めます.これらの生理機能性については佐分利ら,応用糖質科学,2013にて詳しく紹介されています.
固定化酵素を利用したエピラクトース合成システム
生物化学研究室のホームページへようこそ。当研究室に関する情報をお知らせしています。